高卒で就職して一年で辞めました 第三十六話

お前も正社員にならないか。

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※登場人物の名前、設定、職種など

事実とは少し変えて描いております。

居心地の良い職場でのパート勤務を続けていた私でしたが

20歳になり、いつまでも短時間パートを続けていくわけにはいかない。と退職を決意。

 

退職の意向を社長に伝えた3日後

突然「煙川さん」と共に現れた社長は

「この会社で正社員にならないか」と言ったのです…

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社長は私から退職の意向を聞いた後、とても悩んだのだと話してくれました。

 

なんとか長く勤めてもらいたい。

ただ、基本的に事務員の正社員雇用はしていないし

一体どうしたらこの会社に留まってもらえるか…

 

といった内容を煙川さんに相談したんだそう。

 

すると…

DTPデザイン…?

何言ってるかぜんぜんわからない…!

 

 

どうやら話を聞くと、

グラフィックデザイナー兼イラストレーターである煙川さんの元で

イラストレーターやフォトショップといった「Adobe」のソフトを使用したデザイン業務についてみないか。という話でした。

 

 

高校時代に学校の授業で少しだけ触ったことはあったのですけれど

そこそこややこしく、面白さも見出せず、ものにするまでには至らなかった記憶。

 

そ、そんな私にできるの…?

 

未知の仕事への不安でいっぱいでした。

 

 

そもそもどうして「さやけんさんならデザインができるだろう」と思ったのか。

 

その理由を話してくれました。

あのFAXのやりとりで!?

 

なんとFAXの端っこで繰り広げたイラストのやりとりの中

「この子はセンスがあるなぁ」と思ってくれていたと教えてくれました。

 

私にとっては

「あんな落書きだけで、なぜそんなことがわかるのだろう」と不思議な気持ちでいっぱい。

 

でも、嬉しくて。

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やってみたい。

 

 

社長や煙川さんの気持ちはただただ嬉しくて

断る理由はひとつも思い浮かびませんでした。

 

 

デザインのことは今は全くわからない。

だけど。

 

 

信じてくれる、期待してくれる2人を目の前にして

不安よりも「頑張ろう」という気持ちが溢れてきたのです。

 

その場で正社員としての雇用契約を結び

「退職する」と話していた先輩スタッフたちにその旨を報告すると

皆が皆、とても嬉しそうに喜んでくれました。

 

 

ここに残ることをこんなに喜んでもらえるなんて。

こんな私を、辞めるのが惜しいと引き止めてくれるなんて。

君ならできると、期待をしてもらえているなんて。

こんなに嬉しいことはありませんでした。

 

「あの時」とは全然違うんだ。

私はやっと、「社会人」になれた。

そう感じたのを覚えています。

 

「社会」というものは辛く厳しいもの。

そう心と体に刻み込まれた傷が、少しずつ癒えていくのがわかりました。

 

 

この時の私は、そんな幸せに満ち溢れていたように思います。

 

 

つづきます…

(因みにこの時の社長と煙川さんとの会話内容は

この後親睦会などで集まった時に社長の鉄板ネタとして毎回話してくれました。

嬉しそうに話す社長の姿を見て、毎回初めて聞くように嬉しかったです)

 

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